第1話

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私は現状を把握しようと、苦しい喉元に手を当てたまま、今まで俯かせていた顔を上げた。 森崎さんと目が合った。 ・・・相変わらず、軽蔑しているような、同じ人間とも思ってないような、冷たい瞳。 「汚い。 アンタ、ずっとここに閉じこもってな。そうすればこの学校も汚染されずにすむし。」 森崎さんの言葉が、終わるのと同時だったと思う。 江口さんと渡邊さんは、私の両腕を掴むと、 ガンッッ!! そのまま、私を個室トイレの中に押しこめた。 そして、すぐにトイレのドアを閉めると、何やらドアの向こう側が騒がしくなった。 ・・・なんとなく想像がつく。 たぶんモップかなんかでも立てかけて、ドアを開かないようにしてんのかな・・・。 私はそんなことをボンヤリと考えながら、また自分の赤く染まった右手に目を落とした。 この血に集中しよう。 大丈夫。怖くない。 落ちつけ落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け・・・・・ ・・・静かになった。 どれくらい経ったんだろう、いつのまにか、ドアの向こう側からは、何も聞こえなくなっていた。 もう6時回ってるし・・・さすがに帰ったんだろう。 腕時計の針を見ながら、ホっと一息ついた。 とたんに疲れが押し寄せてき、私はトイレの床にしゃがみこんだ。 どうせ制服は汚れまくりだ。 今更汚いなんて思ったりしない。 それよりも水に濡れたせいで、少し肌寒い。 「・・・あ。鼻血。」 思い出したように私は呟くと、 すぐ横にあったトイレットペーパーをちぎり、小く細い棒になるように、クルクルと丸めた。 そして、その完成品を鼻の穴に軽く突っ込む。
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