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私は現状を把握しようと、苦しい喉元に手を当てたまま、今まで俯かせていた顔を上げた。
森崎さんと目が合った。
・・・相変わらず、軽蔑しているような、同じ人間とも思ってないような、冷たい瞳。
「汚い。
アンタ、ずっとここに閉じこもってな。そうすればこの学校も汚染されずにすむし。」
森崎さんの言葉が、終わるのと同時だったと思う。
江口さんと渡邊さんは、私の両腕を掴むと、
ガンッッ!!
そのまま、私を個室トイレの中に押しこめた。
そして、すぐにトイレのドアを閉めると、何やらドアの向こう側が騒がしくなった。
・・・なんとなく想像がつく。
たぶんモップかなんかでも立てかけて、ドアを開かないようにしてんのかな・・・。
私はそんなことをボンヤリと考えながら、また自分の赤く染まった右手に目を落とした。
この血に集中しよう。
大丈夫。怖くない。
落ちつけ落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け・・・・・
・・・静かになった。
どれくらい経ったんだろう、いつのまにか、ドアの向こう側からは、何も聞こえなくなっていた。
もう6時回ってるし・・・さすがに帰ったんだろう。
腕時計の針を見ながら、ホっと一息ついた。
とたんに疲れが押し寄せてき、私はトイレの床にしゃがみこんだ。
どうせ制服は汚れまくりだ。
今更汚いなんて思ったりしない。
それよりも水に濡れたせいで、少し肌寒い。
「・・・あ。鼻血。」
思い出したように私は呟くと、
すぐ横にあったトイレットペーパーをちぎり、小く細い棒になるように、クルクルと丸めた。
そして、その完成品を鼻の穴に軽く突っ込む。
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