第1話

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まず、鼻に詰めていたティッシュを抜き出すと、 さっそく私は、ズブ濡れ&洗剤だらけになってしまったシャツを脱ぎ、上だけTシャツに着替えた。 だけど、髪の先からポタポタと落ちてくる雫に、すぐTシャツも湿りだす。 泡だらけになってしまった髪は、一応トイレの手洗い場で洗いはしたけど・・・ タオルなんか持ってないから、結局髪の毛はまだビショビショのままだ。 それに、だいぶキシキシになってる。 ・・・こんなに鬱陶しい髪なら、もっと短くしておくべきだったな。 そんなことを思いながら、再度私は手で髪をきつく絞った。 ポタ、ポタ、と床に水滴が落ちていく。 ・・・そういや、 私、最近どれくらい泣いてないんだろう。 ボンヤリと、床にたまっていく水滴を見つめる。 最初の頃こそは、ちゃんと涙を流していた気がする。 イジメられた時。 イジメられた後、家に帰って自分の部屋に閉じこもった時。 次の日学校に行くのが怖くて、ベッドの中で丸まっていた夜。 だけど私は知ってしまった。 泣いても何の意味もないことを。 泣いたからって、森崎さんたちは面白がるだけで。 傍観者であるクラスメイトたちは、目をそらすだけで。 私自身が強くなれるはずもなく。 ましてや神様も居るわけがなく。 ただ、地獄のような日常は、淡々と過ぎていく。 だったら・・・ これ以上、心が傷つかないように感情を殺してしまうことが、一番賢い方法なんだろう。 森崎さんたちに逆らうこともできない、力の無い臆病者の私には、ピッタリの防衛策だ。
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