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達樹の目的地は新東京から電車で5時間程行った片田舎にある鞍隆寺(あんりゅうじ)という名の寺で、母親の実家でもある。
達樹も幼い頃の数年その町に住んでいたが、母親からそんな話を一度も聞いたことがなかったため、その寺が母親の実家だということは今回そこに行くことになるまで全く知らなかった。
達樹は最寄り駅のホームのベンチに座ると、スポーツバッグの他に持ってきていたパソコンケースを膝の上に置く。
そしてその中からノートパソコンを取り出すと、それを起動させる。と、頭の中でセイの声が聞こえてくる。
『達樹、母上は何を言いかけたんだろう?』
達樹は起動したパソコンから目を離さず小声で答える。
「たぶん、捺樹にもよろしく言ってくれ、みたいなことじゃね?」
『捺樹? ……ああ、達樹の双子の?』
「そ」
カチャカチャとパソコンをいじりながら会話を続ける。
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