ツンデレがデレになる頃に

2/8
前へ
/88ページ
次へ
「……なあ、もう少し笑ってくんねーかな」 俺『一宮 日文』は美術室で絵のモデルににそう言った。 「うるっさいわね!!さっさと書きなさいよね!!」 俺のキャンパスの向こう側には幼なじみで同級生の『水嶋 七海』が憤然とした表情で文句を言ってきた。 こいつ………自分からモデルするって言ってきたくせに生意気な。 「わ、私の素晴らしい肢体を絵に書けるんだから文句言うんじゃないわよ」 「お前のその貧乳が素晴らしい肢体なら比野先輩は女神『黙れぇぇぇっ!!!』」 「はうわっ!!」 七海が投げてきたペンが俺の頭を正確に射抜いた。 「痛ってーな………この女版花山 薫!!」 「なんですって!?」 俺とこいつは所謂腐れ縁で親曰わく赤ちゃん時からずっと一緒らしい。そのおかげで俺の体の生傷は絶えない。 だが、幼なじみのひいき目から見てもこいつは可愛い。 俺と一緒にいるのが勿体ないくらいだ。 陽に当たると綺麗に赤に見える長い髪、大きくちょっとつり上がった目、整った顔立ち、胸以外は抜群のスタイル。 だからすっげーモテる。告白された回数だって両手両足じゃとても足りない。 なのにこいつは俺といつも一緒にいる。俺にはそれが不思議で仕方ない。 今日だって俺が比野先輩に絵のモデルを頼もうとしたらこいつが自分から立候補してきたぐらいだ。 ちなみに比野先輩とは本名『比野 藍』――俺が入部してる美術部の主将である。 比野先輩は七海とは正反対で高校生とは思えないナイスボディな妖艶な香りがする美人だ。 何故か俺を気に入ってくれてよく絵のモデルになってくれてる。 ただ、物凄い七海とは仲が悪い。例えるなら犬と猿、龍と虎、水銀橙と真紅みたいな感じだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

683人が本棚に入れています
本棚に追加