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「オレを描きたきゃ、描きゃいい」
「!」
「今のあんた、確かに笑ってるけどな、目は泣いてやがるぜ」
言われて気付く。
頬が、生温い雫で濡れていた。
「狂ってんのはお互い様だろ。オレもこの場所に固執し過ぎて、狂ってんのよ」
この場所は、美しい。
ここは遮るものがない。
僕にはモノクロにしかみえない空も、ここでなら色がついて見える気がした。
だから、ここにいる。
でもきっと、それだけじゃない。
「オレはよ、実はあんたがいるこの場所が好きでね……。居心地いいから、毎回来てたんだしこの場所はあんたがいるから絶対渡したくなかった」
突っ伏したまま、呀梛が言う。
「そんな事、僕も同じだよ。描けない理由は、本当は、描いてしまったら呀梛と会えなくなりそうだからかもしれない」
歪んで歪んで歪んでいるのも一緒。
狂っているのも一緒。
揚句、思ってる事まで一緒だった。
「オレはあんたが描いてる姿がみたい」
「描いた後、何処にもいかないか?」
「当たり前だろ。ここはオレたち二人だけの居場所なんだから」
にこり、と呀梛は笑った。
さっきまでモノクロだった空が、少しだけ鮮やかにみえて。
僕も、自然と微笑む。
「あとはオレが不良から脱出できれば、オレたちかなり安全なのにな……」
うーむ、と悩む呀梛の顔をみながら、僕は血塗られたキャンバスを破った。
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