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呀梛は、ただ呟く。
「あんたもまた描けないのか?」
「呀梛が来るからかな」
「オレのせいかよ」
はぁっ、とわざとらしくため息をついて呀梛は白く、雪化粧をしたコンクリートの床に寝転んだ。
制服が濡れるんじゃないかなと思いつつも僕は何も言わない。
言ったところで、僕なんかの話を聞くような不良じゃないからだ。
一応、僕の方が先輩だけど。
「……ここはいいな。空が何にも遮られないでちゃんと見れる」
「うん。僕もここが好きだ」
何にも遮られない、ここが。
今の世界は、何かに遮られる事ばかり。
遮られずに何かをみようとしたら、僕らはひたすら上から何かをみるしかない。
地上から見える空は、ビルが反射する太陽光で霞む。
だから僕は、この空が好きだ。
「……何かに遮られるくらいなら、オレはそれをぶっ壊すだけだ」
「僕は何かに遮られるなら、それを避ける術を考えるけどね」
「そりゃ、あんたには壊せないだろ」
「そうかもね」
呀梛は笑った。
僕は笑わなかった。
「あ、何か降ってきた」
「……ホントだ」
白く、冷たいモノが空から落ちる。
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