20人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
画材はよくなくてもいい。
題材さえ、ちゃんとしていれば。
もし画材が良いモノとは言えなくても、僕には題材さえあればいい。
そう、問題は画材ではない。
題材だった。
「またここに来てたんだな、あんた」
「呀梛もまたここに来たんだね」
「オレはここがサボりの場所なんだよ」
僕は筆を置いた。
今日は、パレットにまだ絵の具すら出していなかった。
……僕のスランプ加減も、ここまでいくと本当にどうしようか困るよな……。
自分の事なのに、僕はこの終わりのみえないスランプというトンネルから、抜ける方法がわからなかった。
「あんた、いつになったら絵描くんだよ」
「さぁ。トンネルを抜けないと、よくわからないよそんな事。それに、君こそいつ不良から足を洗うんだい?」
「さあな。オレもよくわかんねーや」
そう言って笑う僕たちは、
「僕たちまるで他人事だね」
「そうだな」
自分の事なのに他人事。
性格も成り立ちもまるで違うのに、僕らは何処か似通っていた。
最初のコメントを投稿しよう!