第一章:=画材と題材=

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 画材はよくなくてもいい。  題材さえ、ちゃんとしていれば。  もし画材が良いモノとは言えなくても、僕には題材さえあればいい。  そう、問題は画材ではない。  題材だった。 「またここに来てたんだな、あんた」 「呀梛もまたここに来たんだね」 「オレはここがサボりの場所なんだよ」  僕は筆を置いた。  今日は、パレットにまだ絵の具すら出していなかった。  ……僕のスランプ加減も、ここまでいくと本当にどうしようか困るよな……。  自分の事なのに、僕はこの終わりのみえないスランプというトンネルから、抜ける方法がわからなかった。 「あんた、いつになったら絵描くんだよ」 「さぁ。トンネルを抜けないと、よくわからないよそんな事。それに、君こそいつ不良から足を洗うんだい?」 「さあな。オレもよくわかんねーや」  そう言って笑う僕たちは、 「僕たちまるで他人事だね」 「そうだな」  自分の事なのに他人事。  性格も成り立ちもまるで違うのに、僕らは何処か似通っていた。  
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