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日も徐々にくれ始めた午後、学校から帰宅した俺は、神父である伯父の言い付けで、一人この時間帯では人もまばらな聖堂の掃除にあたっていた。
普段掃除を怠らない叔父のおかげで手入れの行き届いている聖堂は、俺が掃除をしなくても良いくらいだ。
夕日がステンドグラスから聖堂内に差し込み床に鮮やかな色を写し出している。
日本の、しかもそこまで都会でもない、どちらかと言うと田舎に近い立地にしては、立派な教会だ。
「…………」
俺は掃除をする手を止め、ため息をついた。
―ほんと、綺麗だよね…―
立派な内装を見上げながら一人物思いにふけっていると、いつの間にか誰もいなくなっていたらしい聖堂内は物音一つなくなり、辺りはシン…と静まり返っていた。
そんな聖堂ないは何もかもが綺麗で、俺は自分の汚い所が際立ってしまいそうな気がして、途端に怖くなった。
静かに目を閉じ、その静寂に身を委ねる様にしながら、俺は気を鎮めた。
しかし、しばらく続いたその静寂は突如響いた扉を開ける音により、無残にも打ち砕かれた。
ぼーっとしていたため、その音に多少なりとも驚いた俺は、振り向き、そこにいた人物を凝視してしまった。
それは驚いたからではなく、ココに来るはずのない人物に目を疑ったから。
―榛名……?―
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