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スイス人だがゲルマン系に近い俺の金色の髪よりは少し黒っぽい色の髪。
決して大きくは無いが、まつげの長い黒く澄んだ瞳に、沢山のピアスと頭に巻いた包帯が目立つ若者。
俺が見間違えるハズがない人物。
俺の学校の同級生でスイスで暮らしていた時の幼なじみであり、俺の大切な人でもある榛名(ハルナ)だった。
余りにも衝撃が大きすぎて、俺はその場から動く事ができなくなってしまっていた。
俺の住んでいる場所を榛名に教えた覚えはない、むしろ仮に知っていたとしたら絶対に俺のいるココには来ない。
榛名の家は知らないが、俺達が通っている学校からココまではかなりの距離があり、決して歩きや自転車などで来れるような距離でもない。
それに時おり帰るさいに駅で見かけると、いつも俺とは反対側のホームにいるので、家も反対側にあるのだろうと思っていた。
榛名は角の方で掃除をしていた俺の存在にはまだ気づいていないらしく、そのまま聖堂の内装を眺めながらゆっくりと奥へと足を進めている。
時折聖堂内を歩きながら榛名が深呼吸をしているのが分かり、少し心配になった。
もしかしたら体調が優れないのだろうか。
―榛名……―
俺は気づかれない様に気配を殺しながらこの場を抜け出そうと試みる。
出来ることなら榛名の邪魔はしたくなかったから。
しかし、俺のその努力も虚しく、予想していた通り、榛名は突然何かに弾かれたように俺の方を振り向いた。
バッチリと目が合ってしまい、俺は内心激しく動揺する。
榛名は驚いたように目を見開いたまま固まっていて、俺は沈黙の中に取り残された。
俺はその気まずい雰囲気を断ち切るように無理にでも笑顔を作る。
「ヤッホー榛名。こんな所で会うなんて奇遇だね。ここ、今俺が住んでるとこなんだ。」
何故俺がココにいるのか分からないと言う顔をしている榛名にさりげなく説明すると、榛名はあからさまに嫌そうな顔をされた。
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