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翌日、昨日降った雨は結局空が暗くなる前にやんでしまい、今日は春にしては珍しく、朝からやけに快晴な空が広がっていた。 何故だかは忘れたが、人より早く登校する習慣が着いてしまっている俺は、学校の開始時間が八時四十分だというのにそれより約二時間も早くに学校に着いてしまった。 だが、特になにかをするわけもなく、誰もいない教室で俺は一人携帯を開き、ディスプレイの角に表示されている時間を時たま気にしながら意味もなくただ弄っていた。 ―そろそろかな…?― 表示されている時間が調度七時を指した頃、俺は徐に携帯を閉じた。 それと同時に『ガラッ』という音と共に一人の男が教室へと入ってきた。 見るとそこには男にしては少し長めの髪をもち、切れ長の細い瞳に、スラリと伸びた鼻筋をもった美しい顔立ちをした男が皮肉気な笑みを浮かべて俺を見下ろしていた。 予想通りのその姿に俺はため息をつきながら椅子を横向きに座り直して、俺と切っても切れない縁をもったいわば腐れ縁と言えるだろう男、狭霧揺華(サギリヨウカ)に嫌みな視線を送った。 「相っ変わらず早いね」 苦笑混じりに呟くと、揺華は皮肉気な笑みのままフンッと鼻で笑い、『お前に言われたくないな』と偉そうに腕を組ながら近づいてきた。 「だいたいなんでいつも教室の違う俺の所まで来んの?」 椅子を横向きに座り直しながらその偉そうな態度にうんざりして聞き返す。 「今更だろ?」 「まぁ、そうなんだけど……」 もう今までに何回質問しているのかわからなくなる様な問いに揺華はもう答える気はないらしい。 そして俺もそんな揺華を問いただす事はしなかった。 どうせ返ってくるのは『お前は面白いから』というふざけた答えだと分かっていたからだ。 毎朝毎朝本当にうんざりする。 しかし犬猿の仲とはよく言ったもので、なかなか俺自身も揺華を突き放せないでいた。 それには自分の回りにいる人間の中で揺華が唯一自分の素顔を見せる事が出来る存在であるというのもあった。 そもそも俺が揺華にここまで興味を持たれてしまった事の発端はまだ俺達が入学して間もない頃にさかのぼる。 .
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