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「っ!やめろ…っ!」
「え……?」
榛名に襲い掛かろうとしていた男に気をとられて、俺は後ろにいる榛名からの妨げに反応する事が出来ず、気付けば後方に投げ飛ばされていた。
そして、俺が体制を持ち直した時には俺のせいで反応が遅れたのだろう、飛びつくように襲いかかってかきた男に首根っこを掴まれ、押し倒されていた。
「榛名!!」
俺はすぐさま助けに駆け寄ろうとしたが、周りにいた数人の男達がさせるかとばかりに襲いかかってかきて、その相手をするのに精一杯だった。
自分で言うのもなんだが、おれも強いわけで、負けはしない。
しかし、この人数を一瞬で倒せるほど俺は攻撃型じゃない。
どちらかと言うなら防戦型だ。
半分は榛名にノックアウトされているとは言え、それでもまだ相当な人数だった。
伊達に榛名に喧嘩を売っていたわけではないらしい。
「ヘヘッ…ざまぁねぇなぁ…」
「グッ……」
榛名は男に首を強く押さえつけられているらしく、苦しそうに男の腕をつかんでいる。
おかしい。
....
榛名なら例えムリな体制で押さえ込まれていたとしてもこんな相手へでもないはずだ。
襲い掛かってくる男達を倒しながら榛名を盗み見ると、離れているためハッキリとは分からないが榛名が震えていた。
冷や汗も浮かんでいる。
抵抗も少しずつ弱まっている気がする。
それは首を絞められているからではなく、榛名自身がわざと力を掛けまいとしている様に見えた。
そこまで考えた俺は、ある仮説に行き着く。
―まさか…!―
「榛名っ!」
俺が声をあげるのと、榛名に襲い掛かっていた男が吹っ飛んだのはほぼ同時だった。
真っ直ぐに飛んだ男は嫌な音をたてて校舎の壁にぶつかると、力なく地面に倒れる。
「!!?」
その一連の出来事に俺達の回りにいた男達が皆動きを止め、榛名と吹っ飛ばされた男を凝視している。
俺も予想が的中してしまったかも知れないと、額に嫌な汗が浮かび出す。
その場にいる全員が榛名に意識を集中させている中、榛名は力なく頭をもたれながらゆっくりと立ち上がった。
倒れこんだ衝撃で出来た手首の傷から流れ出る自分の血を舐めながら榛名が頭を上げる。
その異様な光景にそこにいた誰もが戦慄し、俺は確信した。
あれは紛れもなくハルナだと。
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