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「新種のウォータースポーツを体験しますう?」
大島は両手で連城を海に突き落とした。
フルーツジュースが空中にパァッと舞い、中身が投げ出された。
頭から着水した連城は一度急減速してから、クルーザーに引っ張られて急加速。
すごい抵抗の中を息ができないスピードで海面を突っ走る。
クルーザーの後方の一点だけがやたら水しぶきがすごいことになっている。
「ジェットスキーをもっとコンパクトに簡易化したウォータースポーツ。名付けて浮間舟渡!」
ははは。
大島の得意気な声が大海原を包み込む。
有希は雑誌に顔を埋めた。
今、大島と目があったら僕まで落とされる気がするからだ。
それだけは避けなくては。
まじであんな事されたらさすがに死ぬ。
30秒ほど進んだところでクルーザーは足を休めた。
どうやら目的のポイントに到着したようだ。
海はどこまでもきれいに透き通っていて、遠くの海面は鏡となって空を映し出している。
アンカーを下ろし、ブイを海面に浮かべた。
それからもう一個余計に浮いているブイを引っ張ってクルーザーに引き上げる。
それはブイではなく浮き輪に包まれた人間だった。
連城は目の焦点がいつまでも合うことはなく、鯉のように口をバクバクとして酸素を食らっていた。
まるで、死にそうな金魚のような顔をした連城は、
「俺は潜らないぞ、俺は潜らないぞ」
と命乞いをしていた。
「分かった。ゆっくり休め」
僕はタオルを渡し、冷え切った体の連城を包んであげた。
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