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デッキに向かうと大島が準備に取り掛かっていた。
酸素ボンベが二本用意され、穏やかな海面を背にして、スキューバダイビングの格好をした大島が待っていた。
「お待たせ」
「遅かったじゃないか。…連城のやつはどうした?」
僕は準備を進めながら、
「あいつは潜らないらしい」
と、言った。
「そうか。まあ、いいや」
大島はすぐに納得したような顔をする。
たぶん、こうなるであろうと見越していたのかもしれない。
だから酸素ボンベが二本しかないのかもしれない。
装備の装着が全て終わると、大島にOKサインを出す。
「そういえば。お前、スキューバの経験は?」
「高校の時に体育の選択授業でやったことがある」
「どんな学校だ!? まあ、いいや。経験者ならとやかく言うつもりはない」
そう言うと、大島は海面に飛び込んだ。
僕もそれに続く。
海は思ったより冷たく、久しぶりの酸素ボンベのかさばりにちょっと手こずった。
エアーチェック、しっかりとエアーが出ている。
「よし、潜ろう」
大島の合図で海に潜る。
それに続いて、僕も潜る。
海の中は青く透き通っていて、エアーの音以外、全く何も聞こえない無音の世界が広がっていた。
シューッ、シューッ、シューッ…
小粒の酸素が大勢で海面に登っていき、静かに消えた。
大島は海面を這うように進んでいく。
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