第五章 オレンジウイング

25/28
815人が本棚に入れています
本棚に追加
/247ページ
大島にただ着いて行けばいいだけ、きれいに透き通った海。 それらが訓練で忙しかった有希に癒やしと今までを振り返る時間を与えた。 ―――お前は連城とペアだ。 二日程前に聴いたセリフが自然と思い出される。 それは全訓練終了後の全体ブリーフィングのことだ。 薄暗い部屋の中、瀬戸さんが前に立ち、訓練の総括が行われていた。 「高面積予備フラップは緊急着陸用に取り付けられたものだ。不用意な使用を禁止する」 ブリーフィングルームは瀬戸さんの言葉に耳を傾け、誰一人、喋る気配はない。 みんな、連日の訓練で疲れて早く落ち着きたいせいなのか、反応すら見せない。 「なお、次回の訓練からアメリカ空軍の協力のもと、ACMの訓練に入る」 その言葉にその場の全員が顔を見合わせる。 ある程度、想定していたことではあるが、まさかと有希は思った。 その場の全員はACMの訓練はアーカレッドに戻ってからだと思っていた。 しかし、実際にはアメリカ空軍の戦闘機と訓練することになったらしい。 アメリカ空軍とACMすることに文句はないが、F-01の性能をさらけ出してしまう事にも繋がってしまう。 「このポートレート基地は偵察衛星から見ることが出来ない。沖縄本土からも離れているから盗撮する事が出来ない」 それがアメリカ空軍とACMする理由だということは、すぐに分かった。 偵察衛星から見ることが出来なくて、隔絶された島。 それだけで、今のアーカレッドにはずいぶん有利なはずだ。 要するに基地を見れないということは、配備されている機体も分からないということである。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!