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大島は申し訳ないとも言えず、ただ黙ってしまう。
大島が悪いわけじゃない。
現実があまりにも強すぎただけだ。
自動操縦のクルーザーは芸のない直線航行で陸を目指しいた。
有希は海から拾ってきた手帳を取り出した。
湿って一つの固まりとなったページを丁寧に一ページずつはがしていく。
そのページには滲みながらちゃんとした字が残っていた。
「20〇3年 09/〇0
今日は亜〇菜の誕〇〇早く〇る」
そこには地球温暖化による海面上昇前の沖縄市民の気持ちが綴られていた。
何でだろう…
何でこんなにも心打たれるのだろう。
僕には全く分からない。
日本人ではないからか?
ものの見方が違うだけで分からないこともあるのか…
僕は手帳を海に投げ返した。
クルーザーは相変わらず芸のない直線航行を続けた。
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