第六章 対決、再び

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実際に海が光っているわけではない。 着陸誘導灯の一種が海面に反射して光って見えるだけだ。 滑走路端まであとちょっと。 海面が一気に近くなる。 海… 数日前に見た景色を思い出す。 確かにそこには建物や民家がリアルに残っていた。 かつてそこに人が、母が住んでいたと思うと… ピピッ、ピピッ。 大島の思考を断ち切るように、警報音がコックピットに鳴り響く。 メインディスプレイには、 「getting OFF course」の表示。 機体は滑走路から外れようとしていた。 (しまった…) 滑走路中心線に向けて飛ぶよう設定されていた機体は、確かに設定通り滑走路中心線に向かって飛んでいたが、滑走路上の横風によって流されてしまった。 横風まで計算して着陸するようには出来ていない。 修正操作はあくまでパイロットの仕事だ。 考え事をしていた大島に修正操作をする考えは浮かばなかった。 機体は左に傾き、滑走路横の草村めがけて進入してゆく。 ゆっくりサイドスティックを右に傾ける。 この速度で慌てて操作すれば失速して、その時点でお陀仏決定だ。 そのまま機体は滑走路に接地した。 ドンッ!! メインギアがコンクリートの路面にしっかりと乗っている。 機体はなんとか無事着陸し、事なきを得た。 着陸滑走後、エプロンに戻った機体はすぐさま整備点検に移る。 数少ない訓練を無駄にしないよう時間を節約するためだ。 機体を降りた大島は久しぶりに「疲れた」と感じた。
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