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07/09 22:04
■「大島の部屋」
誰かが戸を叩いた。
コンコン、と、優しく。
私は誰だろうと思った。
この部屋に来るということは、アメリカ空軍の連中か、長瀬大尉か瀬戸大尉あたりだろう、と予想した。
だが、今は相手にする気分ではなかった。
テーブルには缶チューハイが5、6本空いていた。
出てもいいが、酒臭い口で会話したくない。
居留守を使おうかな。
私は音を立てずに寝そべった。
それから一分が経った。
ノックはそれ一回限りで終わった。
居留守は成功した。
だが…
ガチャッ!
扉が開け放たれた。
外からひとりの男が入ってきた。
大島は異様なものを見る目でそいつを見つめた。
だってそいつは異様だったからだ。
「なんだその格好?」
私は率直な質問をぶつけてみた。
目の前に座った少年は、緑茶に牛乳を入れた飲み物を美味しそうに飲む。
それを飲み干し、ぷはー、と息を吐く。
「ああ、これのこと?」
有希は着ているものを指しながら言った。
明るく輝く、ピンクのジャージが異様に視界に入ってくる。
「これは、さっきターミナルアウトレットで買ってきたんだ。格安で一ドルだったんだよ」
「パッツパツじゃないか」
「格安だったから、サイズ考えるの忘れちゃって、気付いたらパッツパツだった」
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