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少年のようなあどけなさの残る、かわいい喋り方だ。
こういう一面もあるんだ、こいつ。
大島は初めて気付いた。
有希はもっとクールな人間かと思っていた。
だか、彼はまだ18歳。
普通に考えれば成人してるとは言えないし、まだまだ子供だ。
「飲めよ、お前も」
その子供に私は缶チューハイを手渡す。
だが、丁重に断られた。
「僕はお酒を飲みに来たんじゃない」
「別にいいじゃないか、一本くらい」
「僕たちは国の最後の盾として訓練しているんだ。まだ気を抜くわけには…」
ガタガタ!!
有希が言い終わる前に、大島はテーブルをひっくり返し有希に覆い被さるように胸を掴んでいた。
有希は突然のことでびっくりとした表情と、なぜ大島がこのような暴挙に出たのか分からない表情をしている。
私にも分からない、なぜこうしてしまったのか。
有希は私を怒らせるようなことを一言も言っていない。
酔った勢いのせいなの…?
私は何も言えずにただ時が過ぎるのを許した。
大島は一人、誰もいない部屋で天井をあきることなく見つめている。
あきることなく、ではない。
考えることがなくて、目のやり場がないのだ。
違う。
考えることがありすぎて、何も考えられないのだ。
ひっぱたかれた頬がジンジンと痛む。
放たれた言葉が重く頭にのしかかる。
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