第六章 対決、再び

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07/25 09:32 ■「北基地第一航空団アラートハンガー」 整備員の待機室はクーラーが効いていて肌寒ささえ感じる。 設定温度を上げたいのだが、下っ端整備員がそんなことしたら、上官に怒られるかもしれない。 外に出るという手もあるのだが、どうしようか? 屋外の気温は35℃。 ハンガーの中だから少し涼しいが、蒸し暑いのは嫌だ。 迷った末に外に出ることにした。 何かにまとわりつかれるような感触のなま暖かさが体を包みこむ。 アラートハンガーには真新しい機体が羽を休ましていた。 イーグル565号機。 その機体の心強い背中は、新しい主への不安や主がいなくなったことへの悲しみが感じられるようだ。 「機体が心配か?」 後ろから声が飛んできた。 「田代さん」 上級兵の階級証をつけた二つ年上の女性整備員が隣にたった。 「機体は最高の状態ですよ。機体のステータスも94~89の間で安定しています。いつ始動しても問題ありません」 田代さんは機体をコンコンと叩く。 「もうスクランブルがかからないといいな」 「そうですね…」 それは基地中の隊員が思っていることだった。 すでに海に消えていったパイロットは20名以上。 基地には勝てない苛立ちと負けるという絶望感、恐怖感が漂っていた。 パイロット達が待機する部屋には若いパイロットがいる。 戦闘機操縦課程を通過してきたばかりの新人がもうアラートに就いているのだ。 それだけ北基地は緊急事態下にあるのだ。
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