夜を喰む者(人情編)

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急ぐ時、マンションに配備されているエレベーターを使うよりも、真実にとっては階段の方が断然早いのだ。 ヒュンヒュン、と。 まるで木から木へと飛び移るモモンガのように、下へ下へと下りて行く。 漫画やアニメなどで、女性のキャラクターが急いで階段を下りる時によく、腕を曲げて肘を腋にぴったりくっ付けて駆けるシーンがあるが、真実の状態が今まさにそれだ。 ところが、そんな無理な姿勢で莫大な空気抵抗を受けて尚、真実が階段を駆け下りるスピードは衰えなかった。 いやむしろヒートアップしている。 地上二十メートルの高さを階段を使って駆け下り、十秒ジャストに地上に着いた真実は息一つ乱していなかった。 まさに驚異的な運動力。 そのいかにも人間離れした肉体を駆使して尚、輝き続ける女子高生・早乙女真実。 彼女の未来には何だか色々ありそうである。 そう。色々なイミで。 登校する前の目的地に向かって、今日も真実は元気に出かけていく。 …………………………………………………………………………朝。 普通なら、寝る前に七時半にセットした目覚まし時計のおたけびに起こされるところ、昨夜はわりとよく眠ることができた。
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