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雨が、降る。
何て、冷たくて。
哀しい雨。
その夜は、雨が降った。
そして私は今、死にかけている。
一発の銃弾で胸を撃ち抜かれ、それでも生きているなんて、何という往生際の悪さ。
夜の誰も通らない道で、電柱の上に付いている外灯が温かそうで、這って光の下まで行き、電柱に寄り掛かった。
呼吸を整えていると、死に神が、来た。
……私の胸を、撃った人物……。
……私に死を、宣告した、処刑人……。
おかしなことに、その死に神は、私に近付くと、濡れたアスファルトに、膝を屈した。
雨ではなく、私から流れた血で、濡れた、地面、に。
……死に神が、私、を、見つめる……。
私、は……最期、の……言葉、を……言った……。
「最期に……これだけは……言わせて……私は───」
伝えたかったであろう言葉を伝えて、彼女は永遠の眠りについた。
その顔は、優しく微笑み、もはや思い残す事は何もないといったように、幸福に満たされていた……。
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