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どこにでもあるような洋風な間取り。部屋を出て正面にある玄関を無視して百八十度右にターンして、廊下を小走りに、すぐキッチンのある左へと曲がる。
キッチンにはもう既に母の幸恵が起きて朝食を作っていた。
流石だ。
「あら真実。おはよう。今日は早いわね」
「うん。わりと早く起きたつもりだったんだけど、お母さんさすがだね」
「それはもう。二十年以上主婦やってますからね」
緩やかなカールヘアを揺らしながら、四十を過ぎているとは思えないほどの若作りな顔に笑みを浮かべる主婦。
私は母の後を素通りし、キッチンの奥にある冷蔵庫から烏龍茶を取り出して、側にあったコップを掴み、冷凍庫から氷を入れ、烏龍茶を入れる。
……季節は初冬。冬だというのに飲物に氷入れて飲む人は私だけじゃない筈だ。
「……お母さん、『手伝おうか?』っていう娘の優しい言葉が聞きたいな~」
「───っ。手伝おうか?」
コップの中身を飲み干し、コップを元の場所に置いて、烏龍茶を冷蔵庫に戻してから言う。
……手伝って欲しいならそう言えばいいのに。ウチのママはどこか素直じゃないところがある。自由だし。
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