夜を喰む者(人情編)

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「それではそれでは」 料理の前に手を石鹸で洗う。 料理教室で講師をしている早乙女ママの口癖だ。 野菜を切る。 隣ではお母さんがねこてでじゃがいもとか切っている。けど、真実はねこてなんかは使わない。 切れれば何でもいいと開き直っているからだ。 「今日もさっくんの所に行くの?」 いつの間に仕上げたのか。香ばしい匂いのする肉じゃがを二人分、皿に盛り付けていく早乙女ママ。 「うん。だってさっくん寝ぼすけなんだもん」 「そう。……さ、できた。食べましょうか」 ……喋っている間に調理を終えるとは、実に見事な手際である。 その手腕に敬意を表して、サラダ類は自分でキッチン前の楕円形のテーブルに持って行くことにする。 テレビを点ける。 早乙女家のブレックファストの始まり始まり。 実に香ばしい香りのする肉じゃがに、キャベツとトマト、そら豆をトッピングしたドレッシング抜きの新鮮さ重視のサラダ。 そして最後に、これが噂に聞くおふくろの味という調味料の入った味噌汁。 それと少なめに盛ったご飯を足して完成。 さっき飲んだ烏龍茶を再度冷蔵庫から取って来て、ドリンクとしてテーブルの真ん中に置く。
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