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小雨が降る。
ニューヨーク郊外の夜道を一台の大型車が走る。
この辺りは夜は格別に不気味で、車のライトを点けていても、周囲は地獄へと続く闇に引きずり込まれるような気がするほど真っ暗だった。
頼りになるのは、ライトだけ。
そしてそんなライトと、時々フロントガラスを撫でるバンパーが恐怖を緩和させる。
だが、運転しているブロンドの母親、クリスの隣に座っているケイト・スタッドフォードにはむしろ、そのまま車ごと地獄へと突っ込んで行ってほしいくらいだった。
後の席には長女と次女のキャサリンとシンディ。
その後には長男と次男のベンとマイク。
マイクの隣には父親のジャンクスが座っている。
後の席とクリスはいかにも楽しそうに冗談を言ったり、笑い合ったりしているが、ケイトはちっとも楽しくない。
何故なら、ケイトはスタッドフォードの人間───家族の誰からも拒絶されていた。
理由などない。
強いて挙げるなら、気に入らない、で充分だ。
末っ子のケイトは今まで一度として誕生日を祝ってもらったことなどない。
小学校の懇談会も、両親は一度たりとも訪れたことがなかった。
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