再びの学園行事

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「っと、事務的な連絡はこれぐらいにして、ここからが本題だ」 左手をズボンのポケットに突っ込み、生徒達を端から端まで見渡す先輩。 「この中には体育祭に乗り気じゃなく、嫌々やっているヤツもいるだろう。何の利益もなく全力を出して疲れたくないよな? しかし、手を抜いた結果が自分だけに返ってくるならまだしも、団体で行動している以上はそうはいかない。そんなお前達のために、俺は学園長と交渉し、ついにコレを手に入れた!」 ポケットに突っ込んでいた左手を出し、その手を天高く突き出した先輩が持っていたのは……カード? ここからじゃよく見えない。 「見えるか、俺が持っている物が? 何度も学園長室に出向き、頭まで下げた努力の結晶……朝と夜も使用可能、1ヶ月間の学食フリーパスだ!」 初めは何を言われたかわからなかったが、徐々に意味を理解した生徒達が歓声を上げる。グラウンドに響き渡る割れんばかりの歓声を耳にした先輩は、満足気に頷きながら、左手を挙げて声を鎮めた。 「この学園は昼の学食は無料だが、朝と夜は違う。特に夜は量的に資金の出費が激しいのがみんなの悩みだと思う。そんな悩みを解消すべく、高等部全15クラスで最も得点の高かったクラスに、優勝賞品としてこのカードを贈呈する!」 再び沸き上がる歓声。かく言う俺も騒ぐ側だ。というより、これで騒いでないヤツなんていないんじゃないかと思う。さすが先輩。やることが大きい! 「個人の身体能力に差があろうと、クラスで団結すれば勝ち目はある! いいかお前ら、本気でやらないヤツにご褒美が与えられると思うな! では、解散!」 先輩が壇上から姿を消したのを確認し、俺達はぞろぞろと自分達のクラスの陣地へと向かう。その眼に闘志の炎を灯しながら。 故に俺は気付かず、忘れていた。ここは“魔術”学園。ただの体育祭ではないということに……。  
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