再びの学園行事

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《さぁさぁ、驚いてる暇なんてありませんよ? それじゃ実行委員の方、後はよろしく!》 スピーカーからは、ブツッというマイクの切れる音が漏れ、スタート地点では綾部さんに仕事を押し付けられた実行委員の人が天に向けてピストルを構える。 「――、――……」 何て言ってるか聞こえないが、『位置について、よーい……』で間違いないと思う。 と、次の瞬間、乾いた音がグラウンドに響き渡り、5人が一斉に飛び出した。 最初のハードルは全員難なく跳び越える。身体強化を施した彼らにとって、あの程度は造作もないことだろう。 しかし、ハードルの跳び方でわずかに差が生まれた。体勢を低くし、綺麗な動きで跳び越えたD組の男子がトップに躍り出る。彼の後を翔が追い、C組の女子、E組の男子、A組の女子と続く。 そして、先頭の男子は平均台へ。トップの余裕か、左側の平均台に上った彼は比較的ゆっくりと進んでいく。にもかかわらず、信じられない現象が起こった。 特にバランスを崩した様子のなかった男子の身体が突然傾き、押し出されるように台から落ちる。蟻地獄にダイブした彼は、必死の抵抗も空しく、穴の中心に呑まれていった。あれ、大丈夫なんだよな……? 右側の台に片足を掛けていた翔も、2人を追い掛けていた3人も、不可思議な事態に驚き、警戒して動きを止める。今、4人の考えは同じだろう。何か仕掛けがあるなら、もう1人ぐらい様子を見よう、と。  
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