再びの学園行事

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《B組、速攻で勝利をもぎ取りました! これは先頭の彼女の魔法が大きいですね》 E組のほとんどは地面に尻餅をついていたり、四つん這いになっていたりといった状態。皐月の後ろにいた俺には一連の出来事が見えていた。 競技開始時、E組が綱に力を込めた瞬間、彼らの足下を冷気が駆け抜けて地面が凍り付き、自分達の引く力と俺達の引く力で滑ったわけだ。 しかもその魔法を仕掛けていたのが、地面に置かれた綱を持ち上げる時だったから驚きだ。やりたいことがあるって言った時から思ってたけど、興味ないフリして実際は勝つ気満々じゃないか。 「ナイス、皐月! さすがだな!」 「ふん、このくらい誰でも思い付くわよ。でも、同じ手は通じないでしょうね」 皐月はE組と入れ替わって位置に着くC組に鋭い視線を向ける。彼女の言う通りだ。さっきは初見だったから上手くいったけど、今回は相手に見られている。奇襲は無理か……。 《それでは続きまして、C組対B組の準決勝を行いたいと思います!》 例によって、実行委員の指示で綱を持ち上げる。さっきと同じように部分強化を施し、開始の合図を待つ。 実行委員の腕が持ち上がる。ピストルの引き金に指が掛かる。引かれる。乾いた音が飛び出る。 思い切り綱を引いた瞬間、決着はついた。 今度は、俺達の敗北という形で。  
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