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俺達の存在に気付いたE組は走ることに専念しようとするが、隣を走るうちのクラスがそれを許さない。攻撃魔法と防御魔法のやり取り。E組が満足に走れない一方で、俺達は着実にその距離を詰めていく。
時折、牽制と足止めの意味を込めて魔法が飛んでくるが、その程度じゃ時間稼ぎにもならない。
B組の仲間が足止めしてくれたおかげで、俺達はとうとうE組のすぐ後ろまで近付くことができた。
ここまで接近すれば魔法は必要ない。お互いに警戒していることもあり、相手の魔法にはすぐに対応することができる。そんな状態で魔法を使うなんて、それこそ時間と魔力と体力の無駄ってものだ。
耳に入ってくるのは、俺を含めた6人分の荒い息遣いと風を切る音だけ。ちょっと気を抜けば転けそうになるぐらい限界が近い。
そんな苦しさももうすぐ終わる。最後の直線を駆け抜け、俺達はグラウンドに戻ってきた。
《来た来た来たーっ! 第5走者の先頭が戻ってきました! B組とE組が並んでトップ、そのすぐ後ろにB組です! B組の高得点が決まっている今、2着続けてゴールするのだけは避けたいところ。E組、踏ん張り所です!》
綾部さんの実況が耳朶を打つ。そう、その通り。この状況下での最高得点は俺達B組が並んでゴールすること。そのためにも――
この距離での魔法は無駄だと言ったが、それは相手が警戒しているからこそ。ゴール間近で想定外の攻撃をされれば反応は遅れるはず。
その遅れを見逃さない。詠唱破棄は既に習得済みだ。
「【明光剣】」
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