再びの学園行事

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そんな中、2番目の集団に交じって到着した唯は、迷うことなくすぐ側に置いてあったカードを拾い上げる。カードの裏に書いてあるお題を目にした途端、彼女の顔に浮かんだ表情はしかめっ面。どうやらハズレを引いてしまったみたいだ。 唯は俺達の方に視線を向けるが、何かを思い出したように首を横に振り、どこかに走っていく。一体どんなお題を引いたんだ? ふと、お題のある場所に意識を戻すと、意外というか当然というか、ある人物を発見。艶やかな黒髪を靡かせて半周地点に到着し、しばらく悩んだ後にカードの1枚を選んで、裏側に書かれた文字を眼鏡の奥に映す女子。俺達の友人にして、魔法大会での仲間、坂上 志乃だ。 彼女も彼女で、恐らく悪いお題に引っ掛かってしまったらしい。ボッと火が点いたように一瞬で顔が真っ赤になり、カードを胸に抱いてあわあわと焦りまくっていた。内容がすげぇ気になる。 やがて2、3年生も追い付き、お題を探す人でトラック内が一層騒がしくなる。 「バナナ持ってる人いませんかー!?」 「人体模型なんてあるわけねぇじゃねぇかー! 先生、理科室までの鍵を開けてください!」 「ポケベル……? はぁ、無理ね……」 「あ、赤いボクサーパンツの男子!? そんなの訊けるわけないよー」 ……何ていうか、ドロドロだった。飛び交う単語を拾ってみれば、ほとんどが無理難題。クリアの可能性があるお題も、性別によっては不可能へと早代わり。これに出なくてよかったわー。 そう、しみじみと実感した俺だった。  
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