再びの学園行事

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「どんなお題を引いたのか知らないけど、さすがの唯も今回は厳しいわね」 俺と同じく、どこかに消えた唯の行方を捜しながら、そんな台詞を呟く皐月。 「そうか? 先輩達の力を借りられればクリアできると思うぞ」 クリアできそうなお題を引いていればの話だけど……。 噂をすれば何とやら。そんな話をしていると、先生達のテントの下から話題の張本人が飛び出してきた。 《どうやら次は1年B組のようですね。一直線にゴールを目指しています!》 スタートラインを越えた唯は、そのまま実行委員に駆け寄り、お題と物の2つを渡す。結果は、今までの誰よりも早く合格サイン。B組の歓声と共に、俺と龍牙と翔はハイタッチを交わした。 《ただ今の選手のお題は……二千円札です! これは中々に珍しい物を持ってきましたね》 まったくだ。だから俺達には訊いてこなかったのか。財布は教室に置いてあるもんな。 さて、唯がクリアしたことだし、トイレにでも行くか。この競技が終わったら行く暇ないだろうし。 その旨を龍牙に伝え、競技を眺めながら歩き出す。クリアできなければその分得点が減るため、どんな難題だろうがみんな必死だ。 チラッとしか見えなかったが、選手達の隙間から見えた坂上は諦め切った顔をしていた。マジでどんなお題だよ!? できることなら手伝ってあげたいけど、こちらからは何もできない。仕方なく自分の目的を果たそうと視線を外せば、俺の目はこれまた当然とも言える人物を捉えた。  
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