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須藤さんのスピードは速い。しかし嵐の走りは更に速い。最初から全力だった嵐は、半周を超えた時点でもトップスピードを維持したまま、あっさり須藤さんに追い付き、彼女の背後にピタリと張り付く。
スリップストリームか!? と、全員が思ったことだろう。けれどおかしなことに、須藤さんの後ろを走る嵐の視線がやけに低い。
視線の先には、須藤さんの……お尻。
緑の短パンに包まれたやや大きめのそれを、嵐は鋭く睨んでいた。視線こそ鋭いものの、鼻の下はだらしなく伸び切っているが……。
と、その時、2人に追い付いた新たな人影。E組の男子だ。これ幸いとばかりに嵐を抜き、須藤さんを抜き、一気にトップに躍り出る。
この事態に、俺の隣で待機していたA組の第3走者が堪え兼ねたように声を張り上げた。
「高峰! いい加減ちゃんと走れ!」
その声に反応したのは、嵐ではなく須藤さん。チラッと後方に視線を向けると、まず嵐を見て、目線の先を追い、再び嵐を見る。
そして、絶叫。
「きゃああああああ!」
須藤さんは両手でお尻を隠しながら加速。嵐も張り付いて離れない。その間にE組は女子にバトンが渡り、俺の視界から消えていく。急げ、須藤さん!
3秒後、半泣き状態の須藤さんからバトンを受け取り、助走から一転して全力で地面を蹴る。
「わりぃわりぃ」
「覚悟しとけよ!」
すぐ後ろで、A組2人のそんなやり取りを耳にした。
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