再びの学園行事

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彩華がしっかりバトンを握ったのを確認して、手を放しながらすぐにコースから外れる。トラック外に飛び出した俺の背後をE組の男子が駆けていくのを尻目に、膝に両手を付きながら荒い息を吐き出した。 疲れた。喉が痛い。足も力が入らない。心臓がバクバクだ。 これが普通のリレーならここまで疲れることはなかっただろう。あの妨害、思ってたよりもキツかった。 「お疲れ。結構手こずってたな」 地面に座り込みながら声をかけてきた龍牙に倣い、俺も崩れるように腰を下ろして口を開く。 「お前と、一緒にすんな……」 まだ呼吸が荒いせいで喋りづらかったけど、その言葉だけ返してトラックに目を向けた。 俺の時と同じく、クラスの援護を味方に付けた彩華は、指先から放った雷撃で他クラスの妨害を弾き散らし、順調なスピードで走り続けている。手こずっていた俺とは大違いだ。 あっという間に半周を走り終えた彩華から次走者の唯へとバトンが移る。さすがと言うべきか、この2人の間に無駄なもたつきはない。 炎も水も土の魔法も、唯はことごとく水魔法で潰していく。凍った地面は避け、向かい風はそのまま突っ切り、E組との差は依然開いたままだ。実際少しずつ距離が縮まってはいるが、この調子なら追い付かれることはないだろう。 事実、見事に半周を逃げ切った唯は林君にバトンを渡す。 約1秒後、E組も再び男子がバトンを受けて走り出した。  
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