再びの学園行事

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どのクラスも順位は変わらず、膠着が続いたままアンカーにバトンが移る。うちのクラスはこの種目に立候補した山口君。純粋にスピードだけなら龍牙と同じぐらい速い。 そんな彼に続くE組は予想通り男子。速さは互角。転けたり妨害にぶつかったりしないかぎり逃げ切れそうだ。 そう思ったのも、一瞬だった。 俺は忘れていた。この種目には、俺が嫌いな、そして最も厄介な相手が、当然の順番で自分にバトンが回ってくるのを待っていたことに。 「こんなくだらないことでも勝負は勝負。なら、負けるわけにはいかないね」 そんな言葉を耳にし、俺は山口君から視線を外して声の方に顔を向ける。 まるですれ違うように、首の動きとは逆の方向に向かう影が、俺の視界を駆け抜けた。 確認するまでもない。架神だ。 《来た! 来ました! あの架神家の次男、架神 冬魔がついに動き出しました!》 興奮したような実況の声を聞き、山口君もE組の男子も思わず振り返る。いや、振り返ってしまった。 そして、驚愕に目を見開く。 架神は、妨害を避けようともしなかった。龍牙を上回るであろうスピードで真っ直ぐ走り続ける。その右手に、闇を宿して……。  
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