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「ぐぬぉ!?」
思わず変な声を漏らしながらそこを見やれば、視界に映るのは曲げられた皐月の肘。その先端。
「なにチンタラしてんのよ。アンタも出るんでしょ」
顔は正面を向いたまま横目でこちらを見やり、俺が口を開くより先に言葉を放ってきた皐月。
何しやがる!? とでも言い返そうと思ったが、皐月の態度を目にしてある可能性が浮かび上がる。
もしかして、こいつなりの激励? アンタも気合い入れなさいってことか?
いやいや、どんだけポジティブなんだよ、俺は。
元々そんなに怒ってなかったとはいえ、小さな火種はいつの間にやら鎮火していた。
「はぁ……。んじゃ行ってくるわ」
気持ちを切り替えるためのため息を吐き、待っててくれている2人と合流。
「3人共、頑張ってね」
「優勝したらパーッとやりましょう」
「最後なんだから勝ってきなさい」
翔、唯、皐月、そしてクラスメート達からの声援に軽く手を振って応え、踵を返し入場門へと向かう。
そう、最後の種目だ。ここまできてうだうだしても仕方ないし、どうせなら気持ちよく終わりたい。それにどのクラスもそこまで得点に差はないはずだ。
「龍牙、彩華。絶対勝つぞ!」
狙うは、優勝。
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