8110人が本棚に入れています
本棚に追加
ワンテンポ遅れて、光の壁と不過視の刃が衝突する。壁は軋んだような音を発するも、外見的な変化はない。隼人先輩の魔法を防いだ時のような傷が刻まれることもなかった。
「【炎弾】」
そして、隣を走る龍牙の反撃。
突き出された彼の右手よりわずかに前方の空間に、突如として燃え上がるオレンジ色の炎。不規則に揺らめくそれは、俺達の後方を走る、魔法を放ってきたA組の男子生徒へ一直線に向かいつつ、丸みを帯びた形と化す。
前方へ走る者と、前方から向かってくるもの。両者の関係上、男子生徒にとって龍牙の放った魔法の飛来速度は恐らく倍以上に感じるはずだ。避けようと思った時には目の前まで迫っているだろう。
果たして、龍牙の魔法は男子生徒に命中した。
回避を選択したらしく、身体を捻ろうとしている中途半端な状態で魔法が直撃し、爆発。腹部が軽く焦げ、爆発の衝撃で後ろに吹き飛んだ男子生徒は、彼の後ろを走っていたD組の男子を巻き込んで壁に激突。2人共動かなくなった。
ちなみに、この一連の流れは時間にして3秒にも満たない。
「おっ、ラッキー」
「後ろにいたのが女子だったらどうすんだよ……」
「大丈夫だ。その時は私の魔法で軌道を変えていた」
3人でそんな短いやり取りを交わし、再び走ることに集中した。
最初のコメントを投稿しよう!