再びの学園行事

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その後は後方からの追撃はなく、全員がひたすら1階の廊下を駆け抜ける。そりゃもう、『廊下は走るな』という校則を考えた人をバカにする勢いで。 この学園はロの字型なっているため、突き当たりの角を曲がるためには多少減速しなければならない。そこが距離を詰める絶好のチャンス。 龍牙は角を曲がる際、床の隅――床と壁の接地点を足場にし、緩やかな弧を描くのではなく、直線的な動きで曲がり切った。一方、彩華は曲がる直前で床を滑り、滑りながら向きを変えて再び走り出す。まぁ当然、俺が真似するのは彩華の曲がり方だ。 そうして二度角を曲がったところで、俺達の視線は矢印に従って2階への階段を上っていく先頭集団を捉えた。 「よっしゃ! この距離ならまだ追い付ける!」 嬉々とした様子で吼える龍牙。 「だがまだ序盤だ。体力は温存しておくべきではないか?」 そんな龍牙に、彩華が冷静な意見を投げ掛ける。俺としてももっと広い場所に出てからでいいと思うんだが……。 「彩華がそう言うならいいけどよ、あんま呑気に走ってると差を広げられるぞ」 龍牙の言うことにも一理ある。向こうが先に本気を出せば追い付くのは難しい。 「だろうな。だから、校舎を抜けた直後が勝負だ」  
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