再びの学園行事

85/115
前へ
/217ページ
次へ
誰の提案でもなく5秒ほど休憩して呼吸を整え、前走グループを追い掛けて3階へ向かう。 幸か不幸か、休憩したといっても全力で走っていたため、先頭との差はさらに縮まっていた。体力が保てばいいんだけど……。 そんなことを考えながら早速女子生徒を1人抜き。今にも倒れそうなぐらいヘロヘロで、彼女もさっきのトラップの被害者だと思われる。ご愁傷様です。 走り抜く際、龍牙が何かを思案するように彼女を見つめていた。 そうして5度目、6度目の角を曲がり、先頭が見える直線距離に差し掛かった所で、 「やっぱ納得いかねぇ」 何の脈絡もなく、龍牙が口を開いた。 「どうした?」 彩華の問い掛けに、 龍牙は正面を睨み付けたまま答える。 「先頭はそこまで疲れてる様子はない。なのに俺達だけ疲れてるのは不公平だろ」 改めて先頭集団に目を向けてみると、確かに龍牙の言う通りだ。さっきのトラップは後ろから迫ってきたんだし、前の方を走っていた生徒に被害がないのは当然とも言える。 「だからよ……ここで仕掛ける!」 言うや、龍牙は右手の人差し指と中指を真っ直ぐ伸ばし、ぼんやりと赤く輝き始めたその指で眼前の空間に円を描く。走り続ける龍牙に合わせるように円も移動し、内側に赤い線が伸びてあっという間に魔法陣が完成した。 「【螺旋劫火】」 そして、発動。 魔法陣から飛び出す形無き炎。それは螺旋を描きながらもの凄いスピードで前方へ進んでいく。  
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8110人が本棚に入れています
本棚に追加