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誰の提案でもなく5秒ほど休憩して呼吸を整え、前走グループを追い掛けて3階へ向かう。
幸か不幸か、休憩したといっても全力で走っていたため、先頭との差はさらに縮まっていた。体力が保てばいいんだけど……。
そんなことを考えながら早速女子生徒を1人抜き。今にも倒れそうなぐらいヘロヘロで、彼女もさっきのトラップの被害者だと思われる。ご愁傷様です。
走り抜く際、龍牙が何かを思案するように彼女を見つめていた。
そうして5度目、6度目の角を曲がり、先頭が見える直線距離に差し掛かった所で、
「やっぱ納得いかねぇ」
何の脈絡もなく、龍牙が口を開いた。
「どうした?」
彩華の問い掛けに、 龍牙は正面を睨み付けたまま答える。
「先頭はそこまで疲れてる様子はない。なのに俺達だけ疲れてるのは不公平だろ」
改めて先頭集団に目を向けてみると、確かに龍牙の言う通りだ。さっきのトラップは後ろから迫ってきたんだし、前の方を走っていた生徒に被害がないのは当然とも言える。
「だからよ……ここで仕掛ける!」
言うや、龍牙は右手の人差し指と中指を真っ直ぐ伸ばし、ぼんやりと赤く輝き始めたその指で眼前の空間に円を描く。走り続ける龍牙に合わせるように円も移動し、内側に赤い線が伸びてあっという間に魔法陣が完成した。
「【螺旋劫火】」
そして、発動。
魔法陣から飛び出す形無き炎。それは螺旋を描きながらもの凄いスピードで前方へ進んでいく。
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