再びの学園行事

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右へ左へ、時には真っ直ぐ。何度か他クラスの生徒と鉢合わせて戦闘にもなったが、みんな龍牙の前に散っていった。俺が危うく脱落しそうになったことはあまり語らないでおこう。 そんなこんなで進む内、俺達は実に呆気なくこの迷宮を突破してしまった。 「……あれ? 終わり?」 「そのようだな」 「さすが彩華。これはもう超能力だな」 どうやら入ってきた扉の反対側が出口らしく、外には矢印でルートを示す看板と、体育館へと続くレンガ舗装の並木道だけがあった。 指示に従ってその道を走りながら辺りを見回すが、人影も無ければ騒音も無い。不気味なくらい静寂が支配している。 「そういえば、いつの間にか綾部さんの実況が聞こえなくなってるな」 実況だけじゃなく、グラウンドに残っている生徒の歓声も聞こえない。ポツリと漏らした呟きに答えてくれたのは龍牙だった。 「多分魔法で意図的に届かないようにしてんだろ。校舎に入った時から聞こえなくなってたし、あの放送はグラウンド内に抑えられてる。大方、進行状況を隠すためだな。おかげで今の状況がさっぱりだ」 肩をすくめた龍牙を見て思わず苦笑い。そんな俺の視界の端に、意外な人影が飛び込んできた。 講堂の出口に立つ3つの影。その1つが放つ銀色の輝きは、見間違うはずがない嵐のもの。遠目に確認できるかぎり、隣にいるのは架神と東條だ。 なんか、目を丸くして驚いてるように見えなくもない。  
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