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走る速度を落として慎重に進み、広い体育館の中程まで差し掛かった所で、
「止まれや、神城、二宮! あっ、彩華ちゃんは進んでいいよー!」
毎日のように聞いてるアイツの大声が耳に飛び込んできた。
「無視だ、無視」
元よりそのつもりだ。ってか、ホントに止まるヤツなんていないだろ。
嵐の声を無視して出口に近付く。
「おーい、振り向くぐらいしろよ!」
後ろからのツッコミを背中に受けたその瞬間、突如側面から強烈な圧力を受けた。
風だ。渦を巻くほどの暴風。俺達はその流れの中にいた。
強風に押されて飛んできた彩華を受け止めたものの、俺も耐え切れずに龍牙に受け止めてもらう。カッコ悪いったらありゃしない。
「くっ……、すまない」
「わりぃ、龍牙」
「ぬおぉぉぉぉぉ!」
いくら龍牙でもこの風で2人を支えることは厳しいだろう。嵐の野郎……!
「嵐!」
「俺じゃねぇよ!」
「……は?」
返ってきたのは意外な言葉。それもあってか、龍牙は耐え切れず、俺達は風に飛ばされ、入口近くまで戻されてしまった。
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