再びの学園行事

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「お前達……!」 こちらの動きに気付いた架神がわずかに目を見開いたものの、忌々しそうに奥歯を噛み締めて前へ向き直る。暴風は目前。そりゃ、俺達に構ってる場合じゃないよな。 「高峰、予定を変える! 止まらずに出口まで走れ!」 「おぅ!」 返事をした嵐の両手の平に生まれた小さな竜巻。何をするのかと思いきや、嵐はその竜巻を抱えた腕ごと暴風の中に突っ込み、ドアをスライドさせるかのように両腕を開いた。 次の瞬間、暴風の中に吹き荒れる2つの巨大な竜巻。それが左右からの風を抑えることによって、一時的に通り抜けられる道ができる。 さらには左側に黒い炎、右側に雷の柱が出現し、3人が通る間、風の侵攻を防いでいた。 当然、俺達もその恩恵を受けさせていただいた。 台風の目とはよく言ったもので、渦の中心は嘘みたいに穏やか。しかし嵐達は走ることをやめない。なるほど、架神が言ってたのはこういうことか。 「姑息な手を使ってくれるじゃないか。これはお前の策だろう、二宮?」 問い掛けと共に、振り向くことなく腕だけをこちらに向けてくる架神。そして、その手に集まる小さな黒い球体。それは矢へと姿を変え、放たれたかと思えば再び黒が集中していく。 そうしてわずかな時間差で放たれた計3本の黒い矢が俺達に向かって飛んでくるが、 「あぁ。おかげで楽に通れたぜ」 腕を振るうと同時に現れた龍牙の炎にぶつかり、呑み込まれていった。  
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