再びの学園行事

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そう、考えてる時間もないんだ。 「龍牙、彩華。今まで訊かないでくれてありがとう。でも、今教えるよ」 会話の意図が読めずに困惑する2人を尻目に、俺は出口があるであろう方向に向けて軽いステップで走り出す。 「皐月が狙われたのも、俺が上級魔法を消したのも、“コード”って力があるからなんだ。コードってのは、魔法の構築に作用を及ぼす力なんだと」 この暴風の中なら魔力球に見られることもないはず。つまり、この1回だけコードの力を使うことができる。真衣さんや修司さんには反則だと怒られるかもしれないけど、他の人達にコードの力が知られてない以上は公に失格にはできないだろう。 「そして俺の力は、構築の分解」 あっという間に距離が縮まり、吹き荒れる風が目前に迫ったところで、 「魔法の構築を崩して消すことができる!」 左足でブレーキを掛けると共に、暴風の中に右手を突っ込んだ。 触れた瞬間、頭の中に流れ込んでくる情報。脳裏に浮かび上がる魔法陣。 この構築を、分解。 瞬く時間もなく、吹き荒れていた風も、音も、感触も消え、わずかに残る風の名残りが俺の髪を揺らす。 支えを失った身体は2歩程前につんのめるが、俺は体勢を整えながら後ろを向き、唖然として立ち尽くす2人に笑いかけた。  
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