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だからといって油断するつもりはない。距離がある以上これはチャンスだし、いくら虚を突いたとはいえ架神が黙って攻撃を受けたとは思えない。
「そうか、神城か……」
予想通り、落ち着いた声が風に乗って聞こえてきたかと思えば、一瞬の強風で砂塵は晴れ、黒い霧のようなものを頭上に展開した3人の姿が露わになる。あれで彩華の攻撃を防いでいたらしい。
「まったく厄介な魔法だな。どうやら僕達が完璧に勝利するためにはお前達を脱落させるしかないようだ」
差が縮まっているにもかかわらず3人は走り出そうとしない。むしろ迎え撃つかのように各々魔法を放つ準備を始める。
だが架神は俺達の背後に目を向け、苛立たしげに眉をひそめた。
「と思ったが、そう悠長に相手をしている時間はないか」
俺達の後方を見たのなら導き出される答えは1つ。後続が体育館から出てきたんだろう。
「高峰、ここは任せる。睦月は僕と来い」
「わかりました」
「はぁ? おい、何で――って聞いてねぇし……」
一方的に指示を出すや、東條を連れて走り出す架神。嵐の独り言が空しく零れた。
「行かせるかよ!」
後を追う俺達。しかしその前に嵐が立ち塞がる。
「おぉっと! 悪いけど通さないぜ」
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