再びの学園行事

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それ以降は魔法の撃ち合いはなく、お互い魔力の無駄と察して目だけで牽制しながら地面を駆ける。 いつの間にやら折り返し地点の寮に辿り着き、目印の赤いコーンを回る所で均衡が崩れた。俺と龍牙が内側、架神と東條が外側。つまり、コーンを回った際にわずかな差が生まれたわけだ。 それによって俺達は前に出ることができたが、2人を後ろに走るこの状況はかなりマズい。 案の定、好機とばかりに2人の魔法が再び襲い掛かってくる。 「どうする、龍牙? このまま逃げ切るのはキツいぞ」 防御魔法を展開しながら訊ねる俺に、龍牙もまた防御魔法を展開しながら口を開く。 「んなこと言っても、わざわざこの距離を捨てるのも勿体無いだろ。コイツら相手に次いつ前に出られるかわかんねぇんだからよ」 龍牙の言いたいこともわかる。だがそれならこの状況をどうするべきか……。 「【静夜刀】」 思考の渦に呑み込まれる直前、耳に届く架神の声。そして魔法名。 咄嗟に架神の手元に目を向ければ、その手に握られているのは刀を模した漆黒の刃。 それを両手で握り、切っ先を俺に向けた状態で側頭部まで引き上げた架神は、力強く地面を一蹴。開いていた距離を一歩で詰め、その勢いのまま刃を突き出してきた。 「っ! 【明光剣】」 慌てて光の剣を召喚し、上体を反らしながら下から掬い上げるように剣身を打ち付け、強引に鍔迫り合いの形に持ち込む。 おかげで俺の足は完全に止まってしまった。  
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