再びの学園行事

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隙を突かれないように注意しながらチラッと進行方向に視線を向ける。龍牙を追った東條はグラウンドに向かう道へ姿を消しているため、2対1という最悪の状況は免れた。 もっとも、この化け物が相手じゃ大して変わらないだろうけど……。 「二宮が相手では睦月には分が悪い。お前の相手をしている時間はない」 再び黒刀を構えた架神は、またも一跳びで距離を詰めるべく、腰を落として地面を踏みしめ、足に力を込める。 対する俺は手中から【明光剣】を消し、両手を自由にすることで迎え撃つ。 斬り合いじゃ勝ち目はない。だけど魔法ならまだどうにかできそうだと思えた。 両者が構えてから数秒後、それらしき合図もなく、唐突に架神が地面を蹴る。刃の切っ先を俺に向け、動きは初手と同じ突き。 「ナメんな!」 声を発することで逃げたくなる気持ちを抑え、膝を曲げて身体を沈めながら黒刀を避ける。そして左手を伸ばし、刀を握る架神の腕をがっちり掴んだ。 「っ!」 体育館での出来事以来、架神の表情が驚きに染まる。この隙に何か魔法をと思ったが、大きなケガに至らない魔法が即座に思い浮かばず、結局は蹴りの動きを察知して距離を取らざるを得なかった。 折角のチャンスだったのに……。 でも、ちゃんと出てる。隼人先輩との特訓の成果が。 このままあと少し抑えることができれば足止めとしては十分。けどいい機会だ。ここからは絶対に通さないつもりで相手をしよう。  
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