再びの学園行事

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腕を掴まれたことに多少の警戒を感じたのか、刀の切っ先を下げて下段の構えを取る架神。右足を引いてやや後ろに重心を置き、即座に後退できるようにと考えているのかもしれない。だが架神のスピードなら、あの状態から一瞬で斬り抜けに移ることも可能だろう。憶測でしかないけど、注意するに越したことはない。 視線を固定したまま息を吐き出し、刀を構える架神に隼人先輩のイメージを重ねる。相手の動きとしては、まず魔法での牽制。 予想通り、架神の左手が刀の柄を離れて持ち上がる。対する俺も回避のために走り出そうとしたところで、俺の視界はこちらに近付いてくる人影を捉えた。 恐らく架神も気付いたのだろう。こちらに向けようとしていた手を途中で止め、例の人影の方へと視線を向ける。 最初に目に付いたのは、Cと書かれた胸元のゼッケン。そこから目線を上に移せば、一歩進むたびに揺れ乱れる肩まで伸びた栗色の髪、驚きであわあわと開閉する口、俺と架神をせわしなく見比べる目元が映る。 あまりの慌てように、思わずその人物の名を呟いた。 「……萩野?」 萩野 瑞姫。俺や桐沢と同じ、高等部からの新入生。まさか萩野もこの種目に出てたなんてな……。 なんて思ってる場合じゃない。誰も追い付いてこないから彩華が何かしてくれてると思ってたけど、萩野が来たってことは彩華に何かあったのか? ……いや、萩野以外の後続が来ないってことはそうでもないのか。あぁもう、状況が全然わからない。  
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