再びの学園行事

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何であれ、状況は刻一刻と動いていく。萩野の登場で止まっていた俺達の間を、当の本人が駆け抜けていく。 「お邪魔しましたー……」 そそくさという表現が正しいだろう。なんとか聞き取れる程に声を小にし、存在を消さんばかりの忍び足。その動きがやけにゆっくり見え、通り過ぎていく萩野を見送り――って! 「そう易々と」 「通すかよ!」 「だよねーっ!」 一転して急加速で走り出す萩野の正面に、架神が即座に回り込む。俺も俺で右手の人差し指を彼女に向け、初級魔法の【光弾】を発動。 数十の光の玉と架神の刀撃が萩野を襲ったのは同時。しかしそれらが彼女に触れる直前、 「【風陣昇】」 パンッと乾いた音を立て、胸の前で両手を合わせる萩野。 瞬間、彼女を中心に足元から吹き上がる半透明の風。俺の魔法はその風に軌道を変えられ上空へ。架神の魔法刀での一撃も風に捕まり、ピクリとも動かない。 いや、よく見れば架神の腕がわずかに震えている。下からの風に吹き飛ばされそうになっているのを押さえ付けてるのか……!? 「チッ……!」 ここで舌を打ち、架神は刀を手放して距離を取る。押さえるものがなくなった黒刀は風に吹かれて宙を舞い、黒い靄となって霧散した。 「マジかよ……」 入学してまだ日が浅いにもかかわらず、中級魔法の詠唱破棄。それがどれだけ難しいか、同じ新入生の俺が一番よくわかってる。何より、あの架神の一撃を防いだこと。 コイツ、強い……。  
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