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急ブレーキで減速し、その場にしゃがみ込んで左手を地面に押し付ける。その手を中心に魔法陣が浮かび上がるや、睦月は左手を離し、すかさず右手で作った拳を魔法陣に叩き付けた。
「【蒼柱雷蛇】」
地面を殴った衝撃が魔法陣を通して雷へと変換され、地面を爆ぜながら2つ3つと分裂し、不規則な動きで龍牙に這い迫る。
(直線的な動きがダメなら、これでどうだ……!)
【蒼柱雷蛇】は発動後、魔法陣に触れていれば雷撃の動きを自由に操作することができる。しかし足が止まってしまうため、当てることができなければ追い付くことは不可能になってしまうのだ。だからこそ、普通に走っていては勝ち目が薄いと踏んだ睦月は賭けに出た。
2つの雷撃で左右から挟み、残りで正面――龍牙の背後を取る。どう動こうがこちらで操作することもできるのだ。
「これは避けられないだろ、二宮」
龍牙の背に不敵な笑みを送り、小さく呟く睦月。
「これは躱せねぇな……」
まるで彼の声が聞こえたかのように言葉を漏らす龍牙は、ようやく背後に視線を向け、迫る雷撃を視界に捉える。
その顔には、笑み。
「でも、防ぐことはできるぜ」
瞬間、何も無い空間から炎が広がり、龍牙と雷撃の間を隔てるように壁となって燃え上がった。
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