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脇腹にズキズキと走る痛み。
俺の顔の近くには、河瀬先輩の刀があった。
どう見ても先輩の攻撃としか考えられない一撃。
「ちゃんと峰打ちにしたけど……大丈夫か?」
負けた。最後の策も通用しなかった。
「くそ……」
拳を握り締め、唇を噛み締める。
――結局俺は一撃も……。
「合格だ」
「えっ!?」
唐突な一言だった。
そのせいか、聞こえなかったわけではないのに聞き返してしまう。
「だから、合格だよ」
その言葉と同時に、一滴の赤い液体が目の前の地面にポタッと落ちた。
言わずともわかるそれは、血。
俯いていた顔を上げれば、爽やかに笑う先輩の姿が目に入る。
その頬には、かすった程度の小さな刀傷ができていた。
「かすった程度とは言え、一年が俺に一太刀浴びせたんだ。
降谷さんとの約束通り、俺がお前に刀技を教えるよ」
「はっ!?」
俺は慌てて修司さんに視線を向ける。
だが、俺が目にしたのはとんでもない状況だった。
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