特訓開始

20/35
前へ
/217ページ
次へ
 ◆ ◆ ◆ ◆ 「さて、これで自分達の実力がわかっただろうけど……」 そこまで言いかけた修司さんは苦笑を浮かべながら口を閉ざす。 理由は単純明快。修司さん達の目の前に座っている俺達が原因だ。 ズーンという効果音が聞こえてきそうなほど、俺達の周りの空間はドス黒く歪んでいた。 俺はまだいい。自分の未熟さはよくわかっていたから。 だが龍牙達は自信を粉々に砕かれたようで、俯いたまま顔を上げようとしない。 「そんなに落ち込むなよ。負けたのが普通だ。むしろ勝ってたら俺達の立場がないし、特訓にならないだろ」 呆れたように声を漏らしたのは河瀬先輩。 それに対して口を開いたのは、意外にも翔だった。 「それはわかってるんですけどね……。あそこまで圧倒的だと……」 翔の視線は左端に立つ朝霧先輩へ。 すると何故か微笑む先輩。 普通ならばドキッとしてしまう笑顔だが、今は嫌味にしか感じられない。 翔も同じように感じたんだろう。眉をひそめると先輩から顔を逸らした。 「とにかく、実力の差はわかっただろう? 今のキミ達では幹部クラスの相手には適わない。だからできる限り、俺達と同じぐらいまで強くなってもらう」 強く……。 その言葉が何度も頭の中に響き渡った。  
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8110人が本棚に入れています
本棚に追加