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◆ ◆ ◆ ◆
「さて、これで自分達の実力がわかっただろうけど……」
そこまで言いかけた修司さんは苦笑を浮かべながら口を閉ざす。
理由は単純明快。修司さん達の目の前に座っている俺達が原因だ。
ズーンという効果音が聞こえてきそうなほど、俺達の周りの空間はドス黒く歪んでいた。
俺はまだいい。自分の未熟さはよくわかっていたから。
だが龍牙達は自信を粉々に砕かれたようで、俯いたまま顔を上げようとしない。
「そんなに落ち込むなよ。負けたのが普通だ。むしろ勝ってたら俺達の立場がないし、特訓にならないだろ」
呆れたように声を漏らしたのは河瀬先輩。
それに対して口を開いたのは、意外にも翔だった。
「それはわかってるんですけどね……。あそこまで圧倒的だと……」
翔の視線は左端に立つ朝霧先輩へ。
すると何故か微笑む先輩。
普通ならばドキッとしてしまう笑顔だが、今は嫌味にしか感じられない。
翔も同じように感じたんだろう。眉をひそめると先輩から顔を逸らした。
「とにかく、実力の差はわかっただろう? 今のキミ達では幹部クラスの相手には適わない。だからできる限り、俺達と同じぐらいまで強くなってもらう」
強く……。
その言葉が何度も頭の中に響き渡った。
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