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「……217……218……219……」
身体を支える腕が悲鳴を上げている。
それでも俺は止まることはせず、ただただ腕を動かす。
同時に、隼人先輩に言われた言葉を思い出していた。
『うん。じゃあ光輝は腕立て伏せだ。とりあえず300回だな』
そう言われてから200回。限界を超えながらここまで来た。時間の経過なんてわからない。
だが、それももうホントに限界だ。
「……に、にひゃく……さんじゅうご……」
止まった。止まってしまった。
腕を伸ばしたまま地面を見つめて固まる俺に、頭上から声が掛かる。
「どうした? 止まってるぞ~?」
誰かなんて見なくてもわかる。
それよりもこの状況を早くどうにかしてほしい。
「先輩……もう無理ッス!」
「あと65回だろ? 頑張れ」
だけど、俺の心からの叫びはあっさり受け流された。
「いやマジで! 普通に生活してれば腕立て300回やる機会なんてありませんから!」
俺の必死さが伝わったのか、先輩はため息をつくと口を開く。
「わかった。今日はもういいよ。今日はな」
ようやく解放されたことで力が抜け、うつ伏せに倒れ込む。
“今日は”という部分を強調されたことには安心できないけど……。
明日は絶対筋肉痛だ。
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